1月、2月は映画界にとって、大きなイベントが
目白押しの季節です。

前年に公開された作品にとってはゴールデングローブ、
アカデミー賞といった賞レースの時期であり、

インディペンデント映画に携わる人々にとっては
サンダンス映画祭という最大のイベントが、現在
雪のユタ州はサンダンスリゾートで行われています。


数千本の応募の中から選ばれた無名の新人達が
「スター候補」の仲間入りを果たす登竜門として
名高いこのサンダンス映画祭ですが、

昨今の不況の影響もあり、ここ1~2年はいまいち
盛り上がりに欠け、買い手を探す作品にとっても
厳しい風が吹いていました。

ところが今年はその反動もあってか、規模の小さな
秀作に大手の配給会社がここ数年なかった高額の
オファーで触手を伸ばす案件が相次ぎ、大きく潮目が
変わる年となりました。

そのサンダンス映画祭で、2年程前に「続・ええとこいってる」
という記事で私が関わっているとして紹介した作品が
今年の大きな話題のひとつになっています。


$LAウエストサイド日和

Focus Features nabs 'Pariah'
フォーカスフィーチャーズが「Pariah」(の配給権を)獲得


「Pariah(のけ者)」というタイトルのこの作品、
レズビアンの黒人女子高生が「自分らしく生きる」
難しさを経験しながら成長していく物語で、

私は諸事情によりその後この作品との関わりを断つ
ことになったのですが、まだこのチームが資金集め等で
試行錯誤している頃に応援していた作品でした。


有名俳優が出る訳でもなく、また主題的にも万人向け
とは言い難いこの作品は、当時なかなかの苦戦を
強いられていたのですが、

最終的には作品自体の持つ力とチームの努力が
様々な逆風を跳ね返して、ここまで漕ぎ着けたことは
心から嬉しいことです。


元々この作品は、そこに選ばれること自体が奇跡に
近いくらい栄誉なサンダンス映画祭主催の育成
プログラムで育まれたプロジェクトで、2010年の
映画祭への出品を目指していたものの、紆余曲折を
経て今年の出品にこぎつけたようですが、

逆にこの1年の遅れによって、昨年までと打って変わって
買い手側の動きが活発になった今年の映画祭に当たったこと、
また「The Kids Are All Right」というレズビアン夫婦を
主人公にした作品が今年の賞レースをおおいに賑わせて
いることも、「Pariah」にとって大きな追い風でした。


今回「Pariah」の配給権を獲得したFocus Featuresは
言わずと知れたインディペンデント映画界を代表する
配給会社であると同時に、昨年の「The Kids Are All Right」
や数年前に一大旋風を起こした「ブロークバック マウンテン」
の配給会社でもあり、ゲイレズビアンテーマの作品を
メインストリームの観客にアピールする第一人者です。

ディールの詳細は分かりませんが、いくつかの記事に
よると、Focusから支払われる配給権獲得料はそれだけで
(今後の興行成績に関わらず)制作費を回収できる程の
金額だったようで、

またFocusがこの監督の次回作をプロデュースするという
内容も盛り込まれるなど、ここ数年の流れに反して
制作チームにとって至れり尽くせりの契約内容になって
いるようです。


当初は(作っている当人達も含めて)もう少し小さめの
配給会社は付いてくれるのでは、という予想だったので、
巨人Focus Featuresが手を挙げたというのは嬉しい誤算
というか、この作品にとってこれ以上ない成果だったと
言えます。


いずれにしても、自分の手からは離れてしまったとはいえ
「この作品を世に出したい」と思っていた作品が実際に
世に出て、当初の予想を裏切る程の大きな好感を持って
受け入れられたことに興奮を覚えると同時に、

今後この作品が公開され、世間一般の人々にどう受け入れ
られるのか、陰ながら見守って行きたいと思います。